第217回国会 衆議院 環境委員会 第8号 令和7年5月13日
これより会議を開きます。
内閣提出、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人日本環境アセスメント協会会長島田克也さん、早稲田大学法学学術院教授大塚直さん、東京科学大学環境・社会理工学院教授村山武彦さん及び公益財団法人日本野鳥の会自然保護室主任研究員浦達也さん、以上四名の方々に御出席いただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、島田参考人、大塚参考人、村山参考人、浦参考人の順に、それぞれ十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず島田参考人にお願いいたします。
○島田参考人
皆様、おはようございます。
私は、一般社団法人日本環境アセスメント協会の島田と申します。
本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございます。
それでは、早速でございますが、お手元に資料の方を配付させていただいております。そちらに基づきまして御説明の方をさせていただきます。
まず初めに、我々の協会はどんな協会なんだというのを一ページに載せてございます。
一九七八年、任意団体として、環境アセスメント、こちらに関わる協会として発足をしておりまして、四十七年たったというところでございます。活動としては、環境アセスメントに関しまして、技術ですとか情報、あるいは研修、国際的な連携というようなことをやってきております。
会員会社の方ですが、去年の九月現在では百三十法人ということで、専門サービス業、これは建設コンサルタントですとか環境コンサルタントが多いんですが、環境アセスメントに関わっているような企業の方々が入っているというような団体になってございます。
では、続きまして、今回の法律案に関しましての意見を述べさせていただきます。
まず、次のページ、二ページになりますが、建て替え事業、こちらにつきましての手続の見直しというところでございます。
こちらにつきましては、めり張りのある環境アセスメント手続、これは従来からめり張りのある手続をやらなきゃいけないというところで取り組んできているところでございますが、その中で、今回の改正案というのは大きな意味を持っていると考えております。
御存じのとおり、環境アセスメント、どのような事業でどのような地域で行われるか、そういったことを踏まえた上で、どういった項目を環境影響評価していくか、あるいは、調査、予測、評価方法はどういう方法を選んでいくか、その辺でそれぞれめり張りをつけてやるというのが本来の趣旨ではございますが、やはりどうしても手戻りというリスクがある。手戻りがあると、調査のやり直しですとか一年余計にかかるとかございますので、その辺を避けるために幅広く調査を行うということが行われやすく、画一的な内容となりやすくなっております。
そのような中でも、やはり事業、地域特徴を踏まえて、重点化、簡略化、これがアセスメントにおいても重要であると考えてございます。
特に、近年増えております発電所の建て替え事業、主に風力発電になるかと思いますが、新たな土地の改変がほとんどない場合というのも多く、環境へのインパクトというのは、新設の事業とは大きく異なるということが考えられます。さらに、既存施設でモニタリングデータなどを取得された環境情報などがあったりするケースもありますので、その辺りも有効に使っていくということで、めり張りのあるアセスの実現というのが可能なのではないかと考えています。
今回の配慮書手続における調査、予測、評価の簡略化、それから既存施設の環境影響を踏まえた建て替え事業計画での環境配慮の実施、これは、めり張りのあるアセスメントの観点から期待が大きいところでございます。
今回、この法案で建て替え事業というのがしっかり定義されますと、配慮書の手続の以降に続きます、例えば方法書ですとか調査、予測、評価、その辺りもめり張りのある内容になっていくものと期待しております。
次のページで、要望とさせていただいておりますが、こちら、スムーズに手続を進めていく、新しい法律案に基づいて進めていく上での要望という内容でございます。
建て替え事業の要件ですが、工作物の規模、それから新設区域に係る数値、これを定めるというふうになっております。特に、技術革新が進む領域、例えば風力発電施設などの場合、大規模化が進んだり、効率化が進んだり、そういうことがございますので、その規模の決め方については、将来の変化をある程度は見込んでおいた方がいいのではないかと考えております。
それから、二番目、建て替え事業の配慮書手続では、既存事業の環境影響を踏まえ、具体的な環境配慮を記載する、これが重要な点になるかと思います。ただ、今回、新しくこのような制度になったというところで、どのような配慮を、どのようなことを書けばいいのかという辺りがまず手探りで進むということになりますので、できれば、想定されている適正な環境配慮、例えばどんなものなんだというのを例示するなどして、スムーズに手続を進めるよう配慮いただければと考えております。
三つ目ですが、こちら、当然のことながら、環境アセスメントにおきましては、事業者、それから地域の皆様、地方公共団体など、多数の方々の円滑なコミュニケーションの下に成り立っている制度でございます。ですので、改正法案の目的、それから新たな制度の内容、こちらについて、事業者、国民、地方公共団体の皆様への周知、理解促進、これについての十分な取組が望まれると考えてございます。
続きまして、四ページですが、アセス図書の継続公開でございます。こちらについては多くの意義があると考えております。
まず一つ目、累積的影響検討においての意義。
特に風力発電事業などでは、適地が限られているということで、近接して複数事業が計画される場合も多くなってきております。その場合、土地の改変、施設の稼働、こういったもの、複合影響というものを考えなきゃいけない。これらにつきましては単独事業の検討では十分でないということがあるんですが、そのようなケースですとか、あるいは、風力発電以外でも、大気ですとか水質、道路交通、騒音など、複合的なインパクト、地域へのインパクトを与えるような事業というものも想定されます。
これまでも、そういった事業における累積的影響、これの検討の必要性は認識されてきていますが、アセス図書の公開が限定的であったりということで、既存事例、既存事業の情報がないということで、それらのデータに基づく累積的影響の検討が難しかったということがございます。
今回の法案でアセス図書が継続公開されるということになりますと、その辺りの情報を使って累積的影響の検討が進んでいくものと期待しています。
要望ですが、累積的影響について、こちらについてはこれまで余り検討がされておりませんので、統一的な方法で検討が進められるよう、国においても解析、検討方法について検討を行って、例えばガイドラインなどとして示していただくとスムーズに進むのではないかと考えてございます。
次に、五ページですが、二番目、事業に対する理解の醸成ということでございます。
アセス図書が継続公開されますと、工事中ですとか供用後の各段階で、アセスメントの前提条件がどうであったかとか、あるいは、予測、評価の結果、保全措置の計画、こういったものが地域の皆様ですとかステークホルダーの方々と共有されることになりますので、事業実施についての透明性、こちらが確保されるということで、事業に対する理解醸成が進むということで、こちらについても大きな意義があるというふうに考えてございます。
続いて、六ページですが、三つ目です。環境アセスメントの技術の進展、それから地域の環境情報としての活用ということで述べてございます。
アセス図書に記載されます調査方法、予測方法、評価方法、あるいはそれらの結果といいますのは、その後のアセスメントを実施する際に重要な科学的な知見を含んでおると考えております。さらに、環境保全措置、計画で行われたものがどのような結果であったかというところも重要な情報を含んでおります。この辺りが公開されるということになってまいりますと、それ以降の環境アセスメントにおいて、その結果を十分に考慮した形で更に進んだものに進展していくと考えております。
二つ目ですが、アセス図書における環境調査結果、現地調査など、かなり行われます。これは、なかなか地域では得難いような情報がございますので、地域の行政施策等の検討においても有効に活用されるといいのではないかと考えております。
要望ですが、インターネットで継続公開とされていますが、効率的、効果的に使えるようにということで考えますと、統一された規格で、デジタル情報というのが必須ではないかと考えてございます。
それから、あわせまして、事後調査報告書制度、こちらも充実していく。モニタリングデータなど、そういったものも対象に、今後、洋上風力発電事業などが進んでまいりますと、科学的知見が少ない分野になりますので、そういったモニタリングデータも重要なものになってくると考えます。
それから、公開期間ですが、できるだけ長い期間とすることが望まれると考えますが、その期間を外れた場合においても、研究等の科学目的ですとか、行政、地域の行政で使いたいというような場合は、情報を入手可能な制度とすることが望まれると考えます。
最後に、その他でございますが、陸上風力発電における効果的、効率的なアセスメントということでございます。
こちら、陸上風力発電ということになりますが、例えば鳥、鳥類の問題にしましても、規模の大小にかかわらず、環境への影響というのが及んでくる可能性があると考えております。
現行の制度では、対象事業の要件というのは、出力規模、発電の容量ということで規定されていますが、第二種事業の例えば規模要件を引き下げて、出力規模が小さい場合でも、立地によって環境影響が著しい場合となるおそれがある場合、そういった場合には法対象とするような柔軟な枠組みというのも考えていいのではないかと考えてございます。
以上でございます。
○近藤委員長
ありがとうございました。
次に、大塚参考人にお願いいたします。
○大塚参考人
早稲田大学法学学術院教授の大塚直と申します。
環境影響評価法、アセス法改正と関連する事項について申し上げます。
お手元のパワーポイントと論稿のレジュメを御参照いただければと思います。パワーポイントの後ろの方に論稿がございます。
論稿一ページの「はじめに」に書きましたように、環境アセスメントは、1から4のプロセスを経ることによって合理的な意思決定をするためのツールとして位置づけられます。
今日、ネットゼロ、ネイチャーポジティブの実現が目指される中で、再エネの導入と地域の自然環境の保全の両立を図りつつ、地域の合意形成を進めるために、アセス手続が果たすべき役割は極めて重大でございます。
アセス法は大規模改正から十数年を経ておりまして、その間に問題が山積しております。中央環境審議会でも検討が行われまして、そこに記載した答申が出されました。私もこれに参加しております。本改正案も、この答申と関連していると思われます。
アセス法改正案のポイントについてまず申し上げます。二つの点がございます。
第一が、建て替え事業でございます。論稿二ページの(2)(b)のところを御参照いただければと思います。
建て替え事業については、二点で絞っています。
1として、同種の工作物、つまり新設工作物の規模が既存の工作物と同程度であること、2新設工作物と既存工作物の設置場所が同一又は近接していること、この二点です。規模と位置の要件です。
1に関しましては、同種の工作物について、既存と新設の工作物の規模に関する数値の比が政令で定める数値の範囲内であることに限られています。この数値の比というのは、規模、つまり出力の数値の比となります。
審議会では、規模よりも環境影響の程度で判断する趣旨の意見もありました。しかし、これによる場合には、判定自体が重い手続になり過ぎてしまいまして、建て替え事業について手続の簡素化を進めるという趣旨が実現しないというふうに考えられましたので、規模を基準としたものと思われます。
建て替え基準の配慮書につきましては、当該事業に係る環境の保全のための配慮の内容が記載されます。これは、既存事業の環境影響評価を踏まえ、新設する工作物についての環境配慮の内容を明らかにする趣旨です。
風力発電について見れば、例えばバードストライク、騒音などの問題点があれば、それをリプレース後の事業で改善することです。
改正案の建て替え事業は、規模と位置の要件を満たしているところから、既存工作物に関する環境調査、モニタリングの結果を新設工作物のアセスメントに活用できる可能性が高いと考えられたものと思われます。
もっとも、規模と位置の要件を満たしていても、例外的に、リプレースのときに新規の土地の改変が大規模に実施される場合もございます。このような場合には、建て替えであっても、既存工作物の環境影響を踏まえた配慮にとどまらず、新設工作物によって重大な生態系影響などが生じないように、環境保全のための配慮を行う必要が生じます。
このような建て替え配慮書の作成に当たっての留意点につきましては、今後、アセス法に基づく基本的事項と主務省令で定められる予定でございます。
なお、この場合の環境保全のための配慮に関する判断主体は事業者でございますけれども、その内容が環境保全の観点から十分でないという場合には、環境大臣を含め国が意見を述べることができます。
こうして、リプレースに関する法改正案の効果といたしましては、再エネについて見れば、促進と抑制の両面が定められていると言えます。手続の簡素化に関しましては再エネ促進に資すると言えますが、環境保全のための配慮の内容の記載も求められることになります。
次に、二つ目の縦覧期間後の環境アセス図書の公開に移ります。
論稿五ページの(2)(b)のところを御参照いただければと思います。
改正案五十二条柱書き第二文の事業者の同意を要するとした点は、著作権との関係で入れられた規定です。私としては、公益の観点から、著作権法に適用除外規定を入れて、同意を必要としない扱いをすることが望ましいと考えていますけれども、これは今後の課題と言えると思われます。
五十二条の「政令で定める期間」というのは、現在の環境省のアセス図書の保管期間は三十年でございまして、これが参考になるものと思われます。
五十二条の「インターネットの利用その他の方法により」のその他の方法には、紙媒体への印刷やその複写も含まれます。
なお、インターネットで公開するに当たっては、公衆送信権に関する同意を事業者から得る必要がございます。また、図書の印刷、ダウンロードを可能にする場合には、複製権に関する同意を事業者から得る必要があると考えられます。
次に、今申しました二点以外の環境影響評価制度の課題に移ります。
一つ目は、前回改正の二〇一一年改正の効果についてでございます。
配慮書、報告書手続は共に有効性を確認されました。この二〇一一年改正で入った二つの手続は共に有効性が確認されましたが、報告書手続については、発電所アセスに関しまして、電気事業法に、報告書に対して環境大臣が意見を述べる機会を設けられていない点に制度上の問題点があると思われます。この点の現行制度の理由としては、電気事業法で、環境影響評価書に記載されたとおりの工事を行うことが工事計画の認可等の条件とされているからだと説明されています。
しかし、風力発電所におけるバードストライクなどの影響は不確実性が高く、構造の確認では環境保全措置を確保できない可能性がございます。認可等との関係だけでは工事着手後の環境影響を厳密に規律することは難しい場合がございまして、国が報告書を取得して意見を述べる制度上の仕組みをつくることが必要であると考えられます。
なお、全般的に、アセス法手続において、供用段階を含めて事後調査をすることを明確にしていくことも重要です。
次に、陸上風力発電所アセス特有の問題に移りたいと思います。
第七次エネルギー基本計画では、二〇四〇年の電源構成に占める再エネの割合は四から五割、風力は四%から八%に引き上げることが示されています。また、陸上風力についても、第六次エネルギー基本計画で、二〇三〇年度の目標として十七・九ギガワットという高い導入目標を掲げています。しかし、陸上風力の環境影響の懸念も重要な課題になっております。
アセス手続は、適正な環境に配慮した地域共生型の陸上風力を最大限導入するために重要な役割を持っています。
風力アセスに特有の課題として、二点を挙げておきます。
第一は、地球温暖化対策推進法における地方公共団体実行計画の中での市町村等による促進区域の設定との関係です。適切な立地環境への誘導によって風力の導入を促進するために、ゾーニングに関するほかの制度とアセス法のアセス制度との連携を強化することが課題とされています。
第二に、第二種事業の規模要件を引き下げ、スクリーニング手続を用いて簡易アセス類似の判断をすることが考えられます。先ほど、島田参考人が最後に言われたことと関係しています。
二〇二一年に、風力発電導入の迅速化の要請の下に風力アセスの第一種事業の規模要件が引き上げられました。風力発電所がアセス法の対象とされた二〇一二年以降の施行状況を見ますと、風力アセスは全体の法アセスの九割を占め、また、法律と条例のアセスの割合を見ると、風力アセスはほとんどが法アセスになっていました。このように、ほかの対象事業における規模要件と比較して、風力の法アセスの対象がやや広過ぎたという認識から引上げを行ったものと言えます。
風力の法アセスの規模要件についての検討の結果、規模要件を一万キロワットから五万キロワットにしたほか、風力に関しては規模だけでなく立地が重視されるべきことが明らかになりました。風力発電について立地が重要になるのは、事業そのものの特殊性として、風車自体が環境影響の要因となっているからです。バードストライクや騒音のことを考えるとお分かりになりますように、事業の規模、出力の大小だけでなく、風車を設置する場所の環境によって環境影響の程度が大きく左右されるわけです。
風力アセスの対象に関する規模要件引上げの結果、一から三・七五万キロワットの風力発電所のアセスについて、法律でも条例でも対処しないケースが一部発生しました。風力に関しては規模だけでなく立地が重視されるべきだということを踏まえつつ、これに対して対処するためには、第二種事業の規模要件を引き下げ、スクリーニング判定の手続を通じて簡易アセスを実施することが考えられます。
そして、この点については、従来の考え方を修正して、立地に着目し、明確かつ適切にスクリーニングするための新基準を整備すること、事業特性を踏まえつつ、この新基準に基づいて簡易アセスをする手法を検討することが必要になります。
環境アセスメント法には、そのほかにも様々な課題が残されています。特に、戦略的環境アセスメント、SEAについて一言申し上げておきたいと思います。
再エネのような事業について、立地選定をして適地に誘導するためには、地域空間計画を作ってSEAを行っていくことが必須です。これは、陸上風力についても洋上風力についても同様です。
我が国にも、部分的にSEAを実施する、あるいは、しようとするものがあります。さきに触れました、地球温暖化対策推進法に基づき市町村が促進区域を設定する手続がその一つです。もう一つは、現在国会で審議中の再エネ海域利用促進法改正案における、洋上風力発電事業の区域指定に当たって環境省が海洋環境調査を実施する制度です。
もっとも、包括的な地域空間計画、海洋空間計画や、それに伴うSEAは、我が国では導入されていません。欧米ではかねてSEAが導入されていますが、風力発電の迅速な導入、環境リスクの低減、事業の予測可能性の確保、これらを効率的、効果的に行うためには、空間計画とSEAが必須であると思われます。
SEAがなく、事業アセスメント、EIAのみで対応するときには、当該地域環境全体のあるべき利用の仕方についての検討がなく、各部分においてパッチワーク的に対応しているだけであり、到底合理的な対応をしているとは言えないと思われます。
地域空間計画、SEA、EIAの関係については、九ページの図を御参照いただければと思います。パワーポイントの九ページでございます。SEA制度化が急務であると考えております。
以上で私の報告を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○近藤委員長
ありがとうございました。
次に、村山参考人にお願いいたします。
○村山参考人
御紹介いただきました東京科学大学の村山と申します。よろしくお願いいたします。
今日は資料をお持ちをしておりますが、最初に略歴と最近の役職を挙げさせていただきました。中央環境審議会の委員を含めて、国内外の理事、会長を務めておりますが、今日は個人として意見を述べさせていただきます。
まず、今回の改正案についてですが、特に大きな問題はないと考えております。ただし、幾つか留意をしていただきたい点を挙げていますので、一ページの下に挙げております。
まず、建て替え事業を対象とした手続の見直しですが、審議会でも議論がありましたけれども、元々、事業の段階で配慮書が適切に作成をされているかという点が一つあるかと思います。審議会でも指摘されましたが、みなし複数案という形で、本来、配慮書では複数案を挙げるということが望ましいとされているわけですが、必ずしもそうなっていない。そういう段階で建て替えをするときに、しっかりとそういった点が考慮されているのかという点は確認をした方がいいと思っております。
さらに、報告書ということも、先ほど大塚参考人が指摘されましたように、前回の法改正で入ったわけですけれども、必ずしも供用段階で報告書が出ているものばかりではないということがあります。実際、例えば風力の事業が行われた段階で、どういった影響が出てきているか、それがしっかり確認をされているかどうかということもチェックをすべきだというふうに考えています。
さらに、数十年たって建て替えということが出てくるわけですが、場合によっては周辺の環境が変わっているということもあるかと思います。その点もしっかりと見定めた上で、次の段階のアセスに入るべきだろうというふうに考えています。
それから、アセス図書の継続公開についてですが、これは外国では既に事例がどんどん出てきているという状況です。アジアでも、韓国、中国、あるいはタイといった国でこういったことが進められている。
こういった図書が継続的に公開されるということについては、環境アセスメント学会でも取組を進めておりまして、環境調査室の資料の五十一ページから掲載をしていただいていますが、提言も出させていただいています。
活用可能性としては、島田参考人が御指摘されたように、特に大きな問題はない、むしろどんどん継続をして、今後の環境配慮に役立つということが期待をされるところです。既に自主的に公開されているものがありますが、部分的に秘匿される部分が出てきています。これは当然の部分もありますが、場合によっては少しそれが大きくなるという可能性もなくはないので、その点には配慮が必要だと考えています。
以上が今回の法改正案の主な点ということですが、残りの部分については、その他ということで発言をさせていただきます。
一つは、先ほど大塚参考人も最後に指摘をされた戦略的な環境アセスメントです。
これは、事業がしっかりと固まった段階でアセスをする、日本がこれまでやってきた事業レベルのアセスメントに加えて、もう少し前の段階でアセスメントを行っていくということがあります。これは、外国ではかなり実は広がってきています。
資料の二ページの上の方に世界地図を挙げさせていただきましたが、これは、アセスメントの世界でかなり先進的に進めているオランダの国の組織である環境アセスメント委員会というところが昨年出した報告書です。今日もお持ちをしました。五月の初めに国際影響評価学会というものがイタリアで開かれました。私もそこに参加をしてきましたが、この組織がそこでこの冊子を配付していたということです。
こちらに、最初の方に地図が出ておりますが、この地図は戦略的な環境アセスメントをそれぞれの国がどういうふうに進めているかということを示しているものです。ただし、残念ながら、日本は、この地図ではこのアセスメントを導入していないという国の一つになっています。世界的にはこういった国は非常に限られているという状況になりました。これについては、先ほども大塚参考人おっしゃったように、必ずしも、何もやっていないわけではないわけですけれども、なかなかそういった点が伝わらないし、制度として戦略的なアセスメントがまだ進められていないという事実はどうしてもあるということになります。
ほかの国々では、二ページの下から三ページの上の方に挙げさせていただきましたが、OECDの各国、OECDもだんだん拡大していますけれども、二〇〇〇年までに加盟をしている国々ではほぼ導入をしているという状況です。アジアの国々もこちらに挙げさせていただきましたように、どんどん導入が進んでいるという状況です。国内でも取組は進んでいますが、自治体レベル、さらには国レベルではガイドラインというものができてきています。ただ、ここ二十年の間どういった取組がされてきたかということについては、なかなか難しい、しっかりとその辺りは整理をする、精査をする必要があるというふうに考えています。
資料としてアメリカの状況、それから韓国の状況を挙げさせていただきました。アメリカは世界で初めて環境アセスメントを実施した国となっていますが、平均して大体年間二十件程度はこういったアセスメントを行っている。主に森林が比較的多いということになっていますが、ほかのいろいろな事業に、計画に対してもこういった戦略的なアセスメントが進められているという状況です。
こういった段階では、環境だけではなくて経済とか社会、いわゆる持続可能な発展と言われているこの三本柱についてしっかりと評価をするということが進められています。
さらに、韓国では二〇〇六年からこういった取組を本格的に進めているという状況があります。四ページの上の方に少し資料としてお示しをさせていただきましたが、韓国では、SEAと称して、政策、計画レベル、それから開発基本計画といった点についてアセスメントを進めています。ただし、このうち開発基本計画は、日本のアセスと比較をすると、ほぼ配慮書段階と同じレベルだろうというふうに言えます。ただし、政策、計画レベルについては、日本ではまだ取り組んでいないというところです。
今年の三月に韓国の環境省に伺う機会がありましたので、データを整理してグラフを示しましたが、日本に比べると相当の数のアセスメントを実施しているということが分かります。政策、計画レベルのアセスメントはこのうちの一部ということですけれども、少なくとも日本とは異なる形で拡大をして進めているということがあります。
こういった点を踏まえて、日本では、ガイドラインが出された二〇〇七年以降、どういった取組を進めてきたのか、そういうことをしっかりとレビューをするとともに、事例を積み重ねていくということが重要ではないかなと考えています。
そのほか、アセスメントに関する論点をこちらの方に挙げさせていただきました。時間があと一分程度ですので、簡単に示したいと思いますが、報告書については、これは事後的なモニタリングということになっています。ただ、必ずしも供用段階のモニタリングが十分されていないという点がありますので、この点については進めるべきだろうと。
それから、一つ飛んで、累積的な環境影響。これも、環境アセスメントは、それぞれ一つ一つの事業についてはしっかりとアセスメントしているわけですが、それが総体として、地域としてどういった影響をもたらしているかということについてはまだ十分把握できていないということがあります。これも外国では取組が進んでいますので、そういったことをレビューしながら日本として取り組むかということを検討する段階に来ているだろうというふうに考えています。
時間になりましたので、以上、報告とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○近藤委員長
ありがとうございました。
次に、浦参考人にお願いいたします。
○浦参考人
おはようございます。日本野鳥の会の浦と申します。この度は、このような機会をいただきましてありがとうございます。
それでは、環境影響評価法の一部を改正する法律案について、参考人意見陳述をさせていただきます。基本的には配付した資料に基づいて発言させていただきます。
まず初めに、現在のアセス案件に係る事業の八割から九割程度は風力発電ですとか太陽光発電といった再生可能エネルギー事業となっていますので、私のこれからの発言は、基本的には風力発電ですとか太陽光発電に向けたものと考えていただいてよろしいかと思います。
まず、今回の改正法の課題についてですが、まず、建て替え事業を対象としたアセス手続の見直しについてです。建て替え事業に係る配慮書については、位置が大きく変わらないことから、事業実施想定区域に係る周囲の概況などの調査を不要とするとありますが、それについてですね。
まず、風力発電の耐用年数というのが基本的に二十年程度です。今回の改正法施行後しばらくは、二〇一二年以前に設置された設備の建て替え事業が中心となると考えます。アセス法に基づく環境影響評価の手続が行われていない事業が多いということになりますが、事前に適切に立地検討や環境影響調査及び事後調査の実施がされていないものがほとんどということになると思います。
今回の改正案では、建て替え事業の要件を満たす場合、事業実施区域の概況調査を省略できるとされているんですが、それでは適切な環境配慮がなされない可能性があるわけです。概況調査などを省略できる建て替え事業は、適切に事後調査を実施した上で、設備の建設後又は稼働中に環境に及ぼす影響が軽微であると認められた風力発電機や附帯設備の建て替え事業のみとするといった方針が必要なのではないかと考えます。
次に、アセス図書の継続公開についてですが、環境大臣が継続公開を可能にするとあるわけですが、可能にするではなく、基本的には事業者が原則として、環境影響評価図書を少なくとも設備の稼働期間中は継続的に公開することが必要ではないかと考えます。それによって、アセス図書の内容の二次利用が促進され、累積的な環境影響を把握するのに有効活用できますし、対象事業に対する地域やステークホルダーの理解醸成が図られると考えております。
次に、めくっていただいて、二つ目は、現行のアセス制度の課題、つまり、今回改正されない部分について、課題について述べさせていただきます。
まず、環境配慮が確保された風力、太陽光発電施設の最大限の導入促進のために必要な施策として、環境影響を回避、低減し、適切な環境配慮が確保された地域共生型の風力、太陽光発電事業を最大限導入し、環境影響の懸念が小さいことが想定される適地へ事業を誘導していく仕組みを構築することが重要だと考えております。
地域共生を両立させるゾーニングの在り方について、例えば種の保存法や文化財保護法などの既存制度と、促進区域制度を始めとしたゾーニングに係る各制度、環境影響評価法に基づく環境影響評価制度の連携を強化すべきと考えます。
また、市町村による促進区域の設定が余り進んでいないという現状があるわけですが、それについては、環境情報の整備や地域事情等を踏まえた配慮事項の考え方を整理し、市町村が促進区域を設定することにメリットを見出せるような制度の設計が必要ではないかと考えます。
次に、法対象規模を下回る事業に係る効果的かつ効率的な環境配慮の確保についてですが、事業規模が小さい場合には、環境影響の程度も小さくなるというのは一般的ではあるのですが、風力発電事業については、事業そのものの特殊性として、風車そのものが環境影響の要因となっております。バードストライクとかが発生するということですが、事業規模の大小ではなく、風車を設置する場所の環境によって、環境影響の程度というのは大きく変わってくるわけです。ですので、小規模事業であっても、立地によっては影響の程度が著しいものがあるというのが課題となっています。
小規模とされる事業を第二種事業として扱うのではなく、規模要件の引下げを行うか、若しくは、小規模事業であっても立地選定の在り方によっては第一種事業として取り扱えるようにするといった、めり張りのある環境アセス制度が必要と考えております。
次に、適正なアセス図書の判断基準、第三者による内容の検討、データ分析についてです。
アセス図書の内容を確認する主体というのは、環境大臣ですとか主務大臣、都道府県知事等なんですが、そもそもアセス図書に求められる基準や提出すべき資料、データの質や量について定められた基準というのがありません。そのため、環境配慮の基準に適合しているか、透明性があるか等は、審査、判断しづらいという状況になっております。そのため、アセス図書に求められる基準や提出すべき資料、データの質や量について、基準を早急に定めるべきではないかと考えております。
事業者が環境影響評価を行うため、影響は軽微という結論を導きやすいという問題点も指摘されております。それについては、第三者機関によるアセス図書のレビューを経るなどして、公正な立場で判定する必要があると考えます。
また、アセス図書には、環境影響や生物等に関する貴重なデータが多数含まれておりますので、アセス図書の、含まれているデータを収集するだけではなく、分析を行い、今後のアセスの技術開発ですとかガイドラインの整備等に生かしていくべきだと考えております。
次、めくっていただいて、配慮書手続におけるゼロオプションについてです。
これは、配慮書手続の中に、手続段階において設定すべき適切な複数案というものがありまして、みなし複数案などと言われるようなものですが、これについて、一度計画されると影響軽減の措置などが取られることはあっても、事業中止によって環境影響を回避される事例というのはほぼないという状況です。このことが地域紛争を引き起こす火種の一つとなっており、導入の妨げの一因となっているところです。事業計画の中止を含めた検討が行えるよう、ゼロオプションを含めた複数案を設定できるようにすべきと考えます。
次に、累積的環境影響への対応についてですが、これはこれまで参考人の皆さんも述べられたことですが、これについても、これから風力発電、太陽光発電がどんどん増えていくときに、累積的な影響評価をどうするのかというのが課題になってきます。
それには、諸外国の事例を参考にしながら、ガイドラインを速やかに策定する必要があると考えます。また、地域特性や事業特性も踏まえ、特定の区域内で実施される事業数を適切に設定するなど、ゾーニング制度を効果的に活用していく必要、また、ほかの事業に係る環境影響を事業者自身が把握するためには、アセス図書の継続公開の実施が効果的であると考えます。
また、戦略的環境影響評価の制度の導入についてですが、これも各参考人の皆様がおっしゃっていたことと同様ですが、諸外国において導入が進められているこの戦略アセスですが、二〇一一年の第百七十七回国会における附帯決議で、その制度化に向けた検討が政府に求められておりますが、今どのように検討されているかはちょっと分からないという状況ですが。
事業段階での環境アセスメントだけでは、計画の全体的な影響というのは把握できませんので、より効果的な環境配慮を実現し、影響を最小限に抑えるために、政府は戦略アセスの導入を再度検討すべきと考えます。
そして最後に、アセス法の見直しの頻度についてですが、二〇一一年に改正されたアセス法の附則において、施行後十年を経過した場合において改正後の環境影響評価法の施行状況について検討すべきというふうにあるわけです。
今回述べてきたアセス法の課題については、中央環境審議会が出した答申案に書かれているものばかりで、これは我々国民が日頃から感じているアセス法の課題となっています。また、専門家により、ほかの課題も多数指摘されているわけです。めくっていただいたところに書いてありますように、これだけ課題があるということですが、それにもかかわらず、今回のアセス法の改正では二項目、建て替え事業のこととアセス図書の継続公開、この二つのみでした。次の見直しは恐らく十年後、二〇三五年頃になると思いますが、それまでの間に、またアセス法の課題は、今ある課題はどんどん大きくなっていくでしょうし、また、新たな課題も噴出してくるのではないか。
これまでの十年でもアセス法の課題はたくさん指摘されてきたわけです。にもかかわらず、改正がされないという状況ですので、このアセス法の見直しの頻度を、今十年というのをやはり三年ですとか短くして、どんどんどんどん随時見直すような体制、制度が必要ではないかと思います。
以上です。ありがとうございます。(拍手)
○近藤委員長
ありがとうございました。
以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
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○近藤委員長
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。空本誠喜さん。
順次指名・・・
○近藤委員長
以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
次回は、来る十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午前十一時三十七分散会